薬を使わずにコレステロールを下げる方法
Vegetarian Nutrition Health Letter Jan. 2001 vol.4, no.Iより要約


 過去十年間にもわたって、コレステロール値と心臓病の危険性を下げる薬が開発されてきました。その中でも、“Statins”と呼ばれる薬があり、これは肝臓でコレステロールが作られるのを抑制することができます。この薬はある研究によると、総コレステロール値を19-26%、LDLコレステロールを25-36%下げ、効果として、心臓病の危険性を約30%低くします()。このように、薬は簡単に心臓病への危険性を下げてくれますが、同時に、値段も高く、多くの副作用があります。さらに言うとこのような薬を飲むことは、コレステロールを下げるだけで他の健康要因には何の良い影響も及ぼしていない可能性があります。これに比べて、食事は心臓病の危険性でなく、他の生活習慣病にも良い影響をもたらすことが出来るのです。

 ある研究では、ほとんど植物性の食事を用いたライフスタイル改善プログラムは、薬と同じ効果が得られました(2)。また、看護婦を被験者とした研究では運動し、喫煙をせず、トランス脂肪酸を摂る量を減らし、十分な葉酸を摂ると心臓病の危険性を80%以上も低減させることがわかりました(3)。これらの研究より、健康的な生活習慣は薬と同じくらいの効果があることがわかります。

 コレステロール値を下げることだけが心臓病の危険率を下げる要因ではありませんが、重要な要因であることは確かです。ある研究では血漿コレステロール値が1%下がるごとに心臓病の危険率を3-4%下げる、といっています。食事要因の中でも、植物性食品の影響は大きく、多くの点で心臓病予防につながります。それらの植物性食品のいくつかを述べてみます。

飽和脂肪酸とコレステロール

 米国心臓協会(the American Heart Association)では、National Cholesterol Education ProgramNCEP)で、2つの食事法を提案しています。NCEPIでは、飽和脂肪酸の摂取量をエネルギーの10%以下に抑え、コレステロール摂取量を300mg以下に設定されています。もし、この食事で期待するコレステロール値が得られなかった場合、NCEP-IIの食事法を用います。これは飽和脂肪酸摂取量がエネルギーの7%以下、コレステロールが200mg以下になっています。また、両方の食事とも脂肪はエネルギーの30%以下になっています。一般的にNECP-Iは、平均的アメリカ人の食事に比べてコレステロール値を約5-10(4,5)NCEP-IIでは、最大13%まで下げる、といわれています。しかし、ある研究ではNCEP-IIでは、HDL値も下げる、といわれていて、多価不飽和脂肪酸の替わりに単価不飽和脂肪酸を使っては、という専門家もいます。一方では、HDL値が下がる原因が多価不飽和脂肪酸によるものかどうか不明で、単価不飽和脂肪酸がコレステロール値に与える影響もはっきりしない、といわれています。それにくらべて、菜食では飽和脂肪酸とコレステロール量がNCEPの食事よりも低くなります(6)

水溶性食物繊維

FDAFood and Drug Administration:米国食品医薬局)が認めているHealth Claimのうち、心臓病と食物繊維との関係を扱ったものがあります。67の研究をまとめたハーバード大学のブラウン氏らの行った学術論文では、食物繊維はコレステロールを下げる効果は低く、種類(オーツブラン、ペクチン、グアーガム)による差がほとんどない、といっています(8)。彼らは、食物繊維の豊富な食物を食べるなどの食生活のパターンを変えることは、結果として、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロールの摂取を下げ、不飽和脂肪酸、ミネラル、葉酸、抗酸化ビタミンなどの予防効果の高い栄養素が多く含まれていることによると考えられる、といっています。そのため、サプリメントから食物繊維を摂ることは、食物から摂るような効果が期待できないかもしれません。

大豆蛋白

FDAはまた、1日に25gの大豆蛋白を摂ることは心臓病予防に効果がある、というHealth Claimを認めました。大豆蛋白はコレステロールの高い人ほどその効果が顕著に見られます(9)。血漿コレステロール値が260-300mg/dlの人は15-25%下がり、220-240mg/dlでは5%以下(10,11)220mg/dl以下の人では、人によりますが、ほとんど影響はない、という結果が見られました。大豆蛋白を摂ることは、飽和脂肪酸やコレステロールの高い肉類や乳製品の摂取を控えることにつながるのでより健康な食生活をすることができます。

ナッツ類

過去十年間にわたって出版された13の学術文献によるといずれもナッツ類はコレステロール値に良い影響を及ぼすことがわかっています(12)。最近のロマリンダ大学の研究でも、くるみを含めた低不飽和脂肪酸の地中海地方の食事はくるみを食べない同じ食事よりもはるかにコレステロール値を下げることがわかりました(13)。その理由は単価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸が豊富で飽和脂肪酸の含有率が低いことによるものだ、と考えられています。驚いたことに、ナッツ類はその脂肪酸の配合比から私達が予想するよりはるかにコレステロールを下げる効果があります(14)。これは、ナッツ類に含まれる植物性蛋白や食物繊維の影響もあるのではないか、と考えられています。

結論

いろいろな食生活の変化−大豆蛋白と水溶性食物繊維を十分に摂取すること、飽和脂肪酸の摂取を控えること、体重過多の人は体重を落とすことが重なることによって、薬と同様にコレステロールを2030%低くする効果が得られます(15)。コレステロールを低くする薬はコレステロール値を下げるかもしれませんが、その他の心臓病に関する重要な点、例えば、血液凝固能を下げることやコレステロールの酸化を防ぐことなどの作用はありません。このようなことを考えたとき、やはり、繊維の豊富な植物性食品を食べ、肉類の替わりに大豆食品を食べて飽和脂肪酸の摂取を下げることは、薬による効果よりはるかに心臓病予防に役立つのです。

参考文献

1       J Am Med Assoc 1999;282:2340
2       Lancet 1990;336:129
3       New Engl J Med 2000;54:2061
4       Am J Clin Nutr 1999;69:632
5       Am J Clin Nutr 1995;62:471S
6       Am J Clin Nutr 1994;59:103
7       Am J Clin Nutr 2000;71:472
8       Am J Clin Nutr 1999;69:30
9       N Engl J Med 1995;333:276
10   Arch Intern Med 1999;159:2070
11   Am J Clin Nutr 2000;71:1077
12   Sabate J. The Role of Nuts in Cardiovascular Disease Prevention. In: Wildman REC. Handbook of Nutraceuticals and Functional Foods. CRC, 2001
13   Ann Intern Med 2000;132:538
14   Am J Clin Nutr 1999;70:504S
15   Am J Clin Nutr 2000;71:401




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